泉北産業株式会社

ワイヤーロープの種類を徹底解説|構造・より方向・用途別の正しい選び方


はじめに

ワイヤーロープは、建設現場や工場、クレーン作業、スキーリフト、ロープウェイなど、私たちの生活のあらゆる場面で活躍する重要な工業製品です。一見シンプルに見えるこの鋼製のロープには、実に多種多様な種類があり、それぞれが異なる用途・環境・荷重条件に対応するよう設計されています。

使用目的に合ったワイヤーロープを正しく選定することは、作業の効率性・経済性・ロープ寿命・そして何より安全性に直接影響します。本記事では、JIS規格G-3525に基づくワイヤーロープの種類と構造、より方向や心綱の違い、そして代表的な用途別の選び方について詳しく解説します。ワイヤーロープの基礎知識を深め、現場での適切な選定に役立てていただければ幸いです。

ワイヤーロープの基本構造と分類

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ワイヤーロープを正しく選ぶためには、まずその基本的な構造と分類を理解することが不可欠です。ワイヤーロープは「素線」「ストランド」「心綱」という3つの要素から構成されており、これらの組み合わせ方によって性能が大きく変わります。JIS規格では素線の切断強度によって4種類に分類されており、用途に応じた規格選定が求められます。

素線・ストランド・心綱の関係

ワイヤーロープの最小単位は「素線(もとせん)」と呼ばれる細い鋼線です。この素線を複数本より合わせたものが「ストランド」であり、さらに複数本のストランドを「心綱(しんづな)」の周りによりあわせることで1本のワイヤーロープが完成します。一般的には6本のストランドが使用されることが多く、バランスの取れた構造となっています。

心綱には大きく分けて「繊維心」と「鋼心(IWRC)」の2種類があります。繊維心は麻心とも呼ばれ、天然繊維や合成繊維をより合わせて作られており、内部には油(グリース)がたっぷりと染み込まれています。この油がワイヤーロープの素線同士の摩耗や絡びを防ぐ役割を果たしています。一方、IWRCは鉄製の心綱であるため、同じ太さでも引っ張り強度が高く、高温環境や重量物の吊り下げに適しています。

JIS規格による種別(E・G・A・B種)

JIS規格G-3525では、素線の切断強度によってワイヤーロープを4つの種別に分類しています。この種別はロープの切断荷重のクラスを示すものであり、使用環境や必要な強度に応じて適切な種別を選ぶことが重要です。

種別 切断強度 製造方法
E種 1320N/㎡級 裸及びメッキ製
G種 1470N/㎡級 メッキ製
A種 1620N/㎡級 裸及びメッキ製
B種 1770N/㎡級 裸製

B種は最も切断強度が高い1770N/㎡級ですが、裸製のみの製造となります。一方、A種は1620N/㎡級で裸及びメッキ製の両方が用意されており、汎用性が高い種別です。表面にメッキ処理が施されているものは耐食性に優れており、海辺や湿気の多い環境での使用に適しています。

ストランドの構成(交差よりと平行より)

ストランドの撚り方によっても、ワイヤーロープの性能は大きく異なります。主な分類として「交差より(点接触より)」と「平行より(線接触より)」の2種類があります。交差よりは同じ線径の素線をより合わせた構造で、素線同士が「点」で接触するため内部断線が起きやすい反面、構造がシンプルで安価に入手できるというメリットがあります。

平行よりは素線同士が「線」で接触するため、内部摩耗や断線が起こりにくく、曲げの影響にも強いという特徴があります。現在では平行よりが広く利用されており、さらに以下のように細分化されています。

  • シール形:耐摩耗性に優れる
  • フィラー形:柔軟性と耐疲労性が高く、最も広範囲に使用される
  • ウォーリントン形:柔軟性と強度のバランスが良い
  • ウォーリントンシール形:高強度で用途が広い
  • セミシール形:耐疲労性が良好

より方向と非自転性ロープの特徴

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ワイヤーロープを選定する際には、「より方向」も重要な判断基準の一つです。より方向はロープの取り扱いやすさ・耐摩耗性・キンクの発生しやすさなどに直接影響します。また、特殊な用途向けに開発された「非自転性ロープ」についても理解しておくことが大切です。

普通よりとラングより

ストランドのより方向とロープのより方向の関係によって、ワイヤーロープは「普通より」と「ラングより」の2種類に分けられます。普通よりはストランドのよりとロープのよりが逆方向になっており、キンクが起こりにくく扱いやすいという大きなメリットがあります。玉掛け作業など、ロープを頻繁に着脱する現場では普通よりが好まれる傾向があります。

ラングよりはストランドのよりとロープのよりが同方向になっており、表面の素線がロープ軸に対して斜めに走るため、表面が円滑で摩耗に強いという特徴があります。ただし、キンクが起こりやすいため、両端を固定して使用する場合に適しており、取り扱いには注意が必要です。さらに、それぞれに「Zより(右より)」と「Sより(左より)」があり、玉掛け作業では両者を組み合わせることでバランスを保つ工夫がなされています。

ZよりとSより(右よりと左より)

ワイヤーロープのより方向は「Z(右より)」と「S(左より)」でも分類されます。Zよりは右方向によってあるロープで、一般的に最もよく使われる標準的なより方向です。Sよりは左方向によってあるロープで、特定の用途や組み合わせ使用時に選択されます。

玉掛け作業では、ZよりとSよりを組み合わせることで、荷物が回転したり偏ったりすることを防ぐ効果が得られます。また、より方向の組み合わせを誤ると、作業中にロープが予期せず緩んだり過度にねじれたりする危険があるため、現場での正しい知識と判断が不可欠です。

非自転性ロープの種類と用途

機械の高揚程化・コンパクト化に対応するために開発されたのが「非自転性ロープ」です。1本の巻上索での作業を可能にするために、ロープの回転トルクを極力抑えた設計となっています。代表的な種類として以下の3種類があります。

  • シングルロープ:ストランド数を3〜4本とし、層心径を小さくすることでロープの回転トルクを軽減したもの。ストランド断面は蛤形をしている。
  • 多層ストランドロープ:円形のストランドを2層以上互いに反対方向により合わせ、各層間のトルクを相殺する構造。「ヘルクレスロープ(丸ストランド2層)」と「ナフレックスロープ(丸ストランド3層・破断荷重が高い)」がある。
  • ロープ心入りロープ:ストランドとロープのよりピッチを加減してロープの回転トルクを軽減したもの。中揚程のクレーンなどに用いられる。

非自転性ロープは特に高揚程のクレーンや巻上機などに欠かせない存在です。通常のワイヤーロープでは1本吊りで使用した場合にロープが回転して荷物が旋回してしまう危険がありますが、非自転性ロープはこの問題を構造的に解決しており、安全かつ効率的な作業を実現しています。

用途別ワイヤーロープの種類と選び方

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ワイヤーロープは使用用途によって最適な種類が異なります。構成(ストランド数×素線数)によって耐摩耗性・柔軟性・耐疲労性などの特性が大きく変わるため、作業環境と荷重条件を正確に把握した上で適切な種類を選定することが重要です。ここでは代表的な用途別の種類とその特徴を詳しく見ていきます。

鉱山・スキーリフト・林業向けワイヤーロープ

鉱山の巻上げやスキーリフトには「1号(6×7構成)」が広く使用されています。6×7は7本の素線で構成されたストランドを6本より合わせた構造で、素線が太く耐摩耗性に優れています。ロープが岩盤や鉱山設備に接触することが多い環境でも長期にわたって使用できる耐久性を持っています。

林業作業索や巻上索には「3号3(6×19構成)」が使用されます。6×19はキンクが発生しづらく型崩れも起こしにくいという特徴があり、山間部での過酷な使用条件にも対応できます。さらにステンレス製ワイヤーロープ(SUS304製)の7×7・7×19・7×37構成は、耐錆性に優れており河川・林業・レジャー用などの静索・動索として幅広く使用されています。

玉掛け・荷役・クレーン向けワイヤーロープ

玉掛け作業で使用されるワイヤーロープの代表格が「6×24」と「6×37」です。6×24は太い素線が特徴で摩耗に強く、重量物の吊り上げや建設現場での長期使用・繰り返し荷重への耐久性に優れています。一方、6×37は細い素線を37本使用した構造でしなやかさと柔軟性に優れており、クレーンやウインチでの巻き取り作業、ドラムやプーリを使用する複雑な動作に最適です。

荷役や天井クレーンには「13号(6×Fi(29)構成)」が適しており、フィラー形ストランドを持つこの構成は耐疲労性が高く曲げに強いという特徴があります。また、高温箇所や大きな切断荷重が必要な場合には「18号(7×7+6×Fi(29)構成・IWRC)」が使用されます。IWRCは中心部に7×7のワイヤーロープを持つ鋼心入りロープで、素線数が多く強度が高いため重量物の吊り下げに最適です。選定の際には使用荷重と安全率(通常6以上)の確保が必須です。

玉掛けワイヤーロープと台付けワイヤーロープの違い

玉掛け作業に使用されるワイヤーロープには、「玉掛けワイヤーロープ」と「台付けワイヤーロープ」の2種類があります。玉掛けワイヤーロープは荷を吊り上げるために使用されるもので、クレーン等安全規則第219条によって加工方法が厳密に規定されています。台付けワイヤーロープは荷を固定するために使用されるもので、加工方法の規定がないため玉掛け作業には使用できません。

これら2つは外見が非常に似ていますが、端末加工の方法が異なります。主な端末加工には「アイ圧縮止め(ロック止め)加工」と「アイスプライス(編み込み)加工」があります。アイ圧縮止め加工はシンブルを組み込みたい場合や納期を短くしたい場合に適しており、加工効率が高くスリーブでしっかりと締まる特徴があります。一方、アイスプライス加工はスリーブがないため凹凸がなく、狭い場所での作業や海での使用、アルミスリーブの溶解リスクを避けたい場合に適しています。現場での安全確保のためにも、この2種類の正しい使い分けが非常に重要です。

まとめ

ワイヤーロープは、素線・ストランド・心綱の組み合わせ、より方向、構成番号(例:6×24、6×37など)、そして用途(玉掛け・荷役・巻上げなど)によって実に多様な種類が存在します。JIS規格G-3525に基づいた正しい理解のもとで、使用荷重・作業環境・柔軟性・耐摩耗性といった条件を総合的に考慮し、最適なワイヤーロープを選定することが、安全で効率的な現場作業の基本となります。

誤った種類のワイヤーロープを選定すると、ロープの早期劣化・断線・重大事故につながる危険があります。本記事で解説した基礎知識を活かし、用途に合った適切なワイヤーロープを選んで、安全で信頼性の高い作業環境を実現してください。


よくある質問

ワイヤーロープの心綱として繊維心と鋼心(IWRC)どちらを選ぶべきですか?

繊維心は油分がたっぷり含まれており素線同士の摩耗を防ぐため、一般的な用途に適しています。一方、鋼心(IWRC)は同じ太さでも引っ張り強度が高いため、高温環境や重量物の吊り下げが必要な場合に最適です。使用環境と荷重条件に応じて選定してください。

玉掛け作業でZよりとSよりを組み合わせる理由は何ですか?

ZよりとSよりを組み合わせることで、吊り上げた荷物が回転したり偏ったりすることを防ぐ効果が得られます。より方向の組み合わせを誤ると、作業中にロープが予期せず緩んだり過度にねじれたりする危険があるため、正しい知識に基づいた使用が不可欠です。

6×24と6×37の構成の違いと用途の違いは何ですか?

6×24は太い素線が特徴で耐摩耗性に優れており、重量物の吊り上げや繰り返し荷重への対応に適しています。6×37は細い素線を37本使用しているためしなやかで柔軟性に優れており、クレーンやウインチでの巻き取り作業に最適です。

玉掛けワイヤーロープと台付けワイヤーロープの違いは何ですか?

玉掛けワイヤーロープは荷を吊り上げるために使用され、加工方法がクレーン等安全規則によって厳密に規定されています。台付けワイヤーロープは荷を固定するために使用され、加工方法の規定がないため玉掛け作業には使用できません。外見は似ていますが、端末加工の方法が異なります。

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